終末医療の難しさ。最終回。

2011年07月22日 21:05

そして、15日。
ついにみどりさんが意識を無くした。
夜まで頑張れば、銀行の仕事を終えた彼女が東京から飛んできてくれるのに。
痛み止めが外され、みどりさんは殆ど機能しない肺に全身で呼吸を続けていた。
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奇跡が起きた。
19時過ぎ、再びみどりさんが目をあけ、僕たちの呼びかけにも目の動きや、かすかな手の動きで答えてくれた。
20:30東京から彼女がやってきた。
みどりさんは彼女を認識した、父も来た。
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意識が幾分回復した事で体の痛みも感じるようになったらしい。
僕には曖昧にしか分からなかったが、付きっきりで看病していた妹は声が出なくなった時の為に指先だけで合図を送ってコミュニケーションを取れるようにしてくれていたようだった。

意識が少し戻って本人が痛がっているようなので痛み止めをお願いしたいのですが。
と話すと「もう片付けちゃいましたからね~」

第三者からは殆ど意識がないように見えるだろうし、この状態で痛みを感じるのかどうか分からないだろう。
しかし、妹が言った通り、みどりさんは殆ど動かない指でお腹を指した。
親子二人が決めた「痛い時」を表す合図。

なんとか痛み止めを再び入れてもらった。
時間がかかるし、どうせ先がない人への治療行為が面倒なのはよくわかる。
後回しになってもいい。「もう片付けちゃいましたからね~」でなく、「準備しますからお待ちください」と言ってほしかった。

家族全員が再び意識を取り戻したみどりさんとお話できた。
痛み止めが効き、再び目を閉じたみどりさん、後はお迎えがくるのを待つばかりだ。
みんなかなり疲れていたのでそれぞれ、家に帰った。
午前3時過ぎ、いよいよかもしれないと病院から電話をもらった。
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昨晩、お別れしたからもう心残りはない、と思いつつも、その瞬間に立ち会えるのなら目の前で送ってあげたいと思い、再び家族が病院に集まった。
「もう、楽になっていいよ」。と家族が話しても、みどりさんは最後の力を振り絞って呼吸を続ける。
もう、感覚はないだろうが、苦しそうな母を見続けるのは辛いし、本人も辛いと思う。
まだ母が元気な頃、「私が入院して意識がなくなったら延命治療とか一切いらないから、あなたが管を抜いてね」
と言われていた事を思い出した。

みどりさんが逝きたくても逝けない状態にしているのは昇圧剤だ。
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夜勤の看護士に「できたら点滴もう止めて頂きたいのですが」とお願いしてみた。
夜勤のドクターに相談してきます。

結果はやはり無理だった。主治医の先生とは延命治療はしない方針で意見が一致しているんですが。。。

夜勤の看護士とドクターに最終的な責任をかぶせてしまうのも申し訳ないので、苦しそうなみどりさんを病室に残し、病院の目の前にあるホテルに戻った。

朝日が昇り、再び病室へ。
ここからは一部、以前のブログに書いた内容ですが。

病室の中からピンポン、ピンポンとアラームが聞こえる。

今度こそお別れを覚悟して入室すると、昇圧剤の点滴がなくなったアラームだった。
しばらく待つがナースが来る気配なし。

昨晩も昇圧剤の点滴はもうやめてもらってもいいです。とお願いしたくらいだし、多少うるさいけど、このまま待つ事にした。

時が流れ、ナースが来てくれた。
点滴を替えよとしてくれたので、「追加はなしでいいですよ」と言う。

案の定、やめるのはむつかしいと説明してくれた。
主治医の先生がいてくれたのが幸運。
倫理的には難しい、命をつなぐ方向とは逆向きになる行動を許可して下さった。

もし、どうしても許可がおりなかったら、病室でつまずいて電源を抜く覚悟をしていた。
母の最後の願いをかなえる為に。

この10日間、終末医療の難しさを実感し、病院のスタッフに迷惑をかけたり、うまくいかない事も多々あった。
最後に面倒を見てくれた主治医の先生がこの先生で本当に良かった。

点滴の追加をやめて30分程。
我が母、松本美登里は静かに息をひきとった。
みどりさんが息を引き取った後、入院した時にみどりさんを見てくれた看護士さんが来てくれた。
主任クラスの看護士さんに今までの事を色々と話した。
看護さんは一生懸命涙をこらえながら、「必ず次にいかします」。と言ってくれた。

生まれて初めて入る霊安室。
お迎えの車が着く直前、誰も見ていない時に、主治医の先生が一本の線香をあげてくれた。
松本さん(母)とも僕とも違った形でお会いしたかった。「また是非会いましょう。活動を応援しています」と言ってくれた。
お迎えの車に乗り込んだ時、主治医の先生と看護士さんが見送ってくれた。

終末医療という難しい現場で色々な事があった。
僕としては、この病院にお世話になって良かったと思える最後だった。

高齢化社会と高次の医療技術によって「終末医療」の問題はこれかどんどん増えてくると思われる。
最後の時間をどう過ごすのが幸せなのか、人の数だけ答えがあると思う。
幸せの方向に向かえる日本の医療であってほしいと切に願う。
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fin

久保田弘信の作品ショップ

新商品あり。暑中見舞いにポストカードはいかが。














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コメント

  1. | URL | -

    Re: 終末医療の難しさ。最終回。

    色々考えさせられました。
    小さい保育園で働く保育者として、園長として、あるべき姿勢を・・・

    写真展のカンパ、5000円程度しかできませんが、協力させてください。
    上記のリンクから入れなかったので・・・振込先など教えてください。

  2. | |

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  3. 久保田 | URL | -

    お心遣いありがとうございます。
    お気持ちありがたくちょうだいします。

    みずほ 銀行
    八王子支店
    普通)2979899
    クボタヒロノブ
    にお願いします。

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