編集長Tさんpart2

2010年07月09日 18:06

久しぶりに会ったTさんと新宿の居酒屋へ。
ビールを片手に近況を語り合い、当然のように昔懐かしい平和出版時代の話になっていく。
当時の編集部員はみんな個性があって面白かった。
Tさん曰く「何度もケンカしましたよ。お互い自分が一番の編集者だと思っていましたから」。
上司であれ、なんであれ、自分がこの企画をやりたいと思ったらとことん進んでいた時代だった。
それは外部のカメラマンの僕が見ても分かるくらい。
出世するより創りたいものを創るという意気込みが溢れていた。

「最近、局も雑誌も元気ないんですよ。ありきたりの企画しか通らなくて」と僕。
T「企画会議で通る企画って、実は誰でも思いつくつまらない企画が多いんですよ。それじゃ読者は納得しない」
K「でも企画通らなきゃ紙面にできないし、辛いとこですよね~」
T「企画でウソついちゃえばいいんですよ」この人、こういう話するときいたずらっ子のような笑顔。
K「うそはまずいでしょう~。後で問題になっちゃう」
T「売れれば勝ちですよ」。マジかよ。この人ならやりかねん。
その昔、バリバリマシンというバイク雑誌があり、その後バトルマガジンという車雑誌ができた。
バトルマガジンBMの企画は上層部を騙すハリボテの企画だったらしい。
Tさんは見事に企画を通し、新しい雑誌を創ってしまった。直属の上司から「Tお前俺を首にする気か~」と怒られたそうだが、結果BMは売れてしまい。直属の上司は俺が創った!と鼻息荒かったらしい。
Tさんは勿論、辞表片手の勝負だった。
T「それでいいんですよ、僕は編集者ですから。手柄じゃなくて読者の為に本創るんですから」。

最近Tさんみたいなバカをやれるディレクターや編集者殆どみないですよ。→正直泣き言。
T「僕らがやればいいんですよ」。この人僕より年上だけど未だ勝負し続けているから格好いい。

そんなTさんが僕の事初めて褒めて、認めてくれた事があった。
バリバリマシンがアマチュアライダーにレースを体験してもらう企画を立ち上げ、エビスサーキットでレースが行われた。
実は僕バイクレースをやっていて、この企画に走れるカメラマンとして登場することになった。

race1.jpg
現役時代の僕の走り

イタズラ好きのTさんが単なるカメラマン参戦の企画で終わらせてくれる筈がない。
「久保田さんレース経験者なんだから20位以内に入れなかったら坊主ね!」マジ!実は峠を走っている子達の方が速いんだけど、特にエビスのようなコースでは。
仕方なく、条件をのみ。久しぶりのレース。

あろう事かレース当日は雨。久しぶり+雨でまともな走りができなかった僕は予選落ち。
しかし、予選落ちの人たちでレースをやり敗者復活戦があるらしい。取りあえず坊主が少し先送りに。

race2.jpg
予選落ちの中ではトップクラスだった僕は生まれて初めてのフロントロー(一列目スタート)

激しく降る雨の中シグナルがグリーン!ホールショットを取るつもりがエンジンストール。
左手を挙げ、後続車にスタート出来ないことを伝える。
すべてのバイクが僕を抜いていった後、ようやくエンジンが息を吹き返した。
やってしまった~。坊主確定。涙!
こうなったら転けてもいいからとことん走ろう、と吹っ切れた。
雨で前が良く見えない、アップヒルのストレートではバイクが宙を舞うくらいにアクセルを開けた。
レース中の記憶は殆どない。気がつけばチェッカーフラッグが振られていた。
シールドを開け、ヘアピンカーブで撮影しているNカメラマンに「僕坊主だよね~」とジェスチャーしながら走る。Nカメは「手を振り、敗者復活だよ!」と合図してくれた。
決勝も無事完走し、僕は確か16位くらいだった。坊主は免れた、と思いきやトップ10に入れなかったんだから坊主ですよ~。と誰かが叫び、結局僕は坊主に。

夜エビスサーキットの近くで一杯。
T「予選、三味線弾いていたんですか~」。とんでもない!
T「初めて久保田さんの格好いい所みましたよ。あのごぼう抜きは鳥肌たった」と初めて僕の事を褒めてくれた。
そう、翌日はT編集長のBMの撮影。カメラマンとしての僕の出番がある。予選はどこかで守りに入っていたのかもしれない。
当時の僕はTさんが編集部の中で常に辞表片手に勝負しているとは知らなかった。いつも笑顔でジョークばかりの明るい編集長だと思っていた。
Tさんとは一年に一度くらいの付き合い。これからは少し増えそう。
飲む度に「あの時の久保田さんは格好良かったな~」と言ってくれる。僕が女性だったらその場で落ちる心の底からあふれ出てくるような笑顔。
新宿での飲みは昔話から、これからのお互いの仕事の話へとシフトしていった。
続く。


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コメント

  1. 懐かしいですね

    Tさんの直属の上司の息子です。
    つまりバリバリマシンの初代編集長の息子です。
    確かにTさんの行動力を褒めていましたよ
    父が亡くなって3年久々にバリバリマシンを思い出しました。
    Tさんによろしくお伝えください

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