編集長Tさん

2010年07月08日 20:02

遙か昔の話。
場所は神保町。

友人のカメラマンがバイク雑誌に写真を届けに行くのに付き合った。
僕は現像所に出した現像の待ち時間だった。

そこで出会ったのが今はなき平和出版のTさん。
一応、名刺交換はしたものの、友人がレギュラーで仕事をしている雑誌から仕事をもらう気はなかった。

写真付きの年賀状を出すだけのお付き合いが2年ほど続いただろうか。
突然Tさんから電話があり、「久保田さん、モーターショーの撮影お願いできませんか~」と言われた。
僕の友人Nさんはサーキットでの撮影があるのでモーターショーには行けないと。

スケジュールを見ると既に撮影の予定が入っていた。
僕たちの世界は先入れ優先が原則。
どれ程条件が良い撮影が後から入ってきても先に引き受けた撮影をする。

その大原則を初めて破った。
Tさんからの初依頼。これを断ったら次はないと思った。
先に引き受けていたクライアントには僕と同レヴェルのカメラマンを紹介して納得してもらった。

引き受けたのは良いが、モーターショーってどうやって撮影するんだ?
会場は水銀灯を含むミックスライト、リバーサルを使えば間違いなく色かぶりをする。
かといってストロボ一発じゃ背景が暗く落ちてしまい素人写真になってしまう。
あれこれ考え、先輩のカメラマンの知恵をかりて、結局ストロボ2灯+マゼンダのフィルターを用意した。
今ではデジタルカメラのオートホワイトバランスで撮影できてしまう。
プロカメラマンの需要が少なくなるわけだ。

Tさんは仁義に熱い人。「久保田さん、ずーっと年賀状くれてたでしょう。僕、そーゆーのに弱いんですよ」。
と満面の笑みで僕に撮影の依頼をしてくれたきっかけを教えてくれた。
モーターショー以降もNさんの仕事を奪わない範囲で僕に撮影をくれていた。

ある時、夜の大黒ふ頭で30~40台近い車を撮影する仕事が来た。
これまたカクテルライト。
僕は撮影の3日前に大黒ふ頭を訪れ、自分の車でテスト撮影してピッタリのフィルターを見つけておいた。

当日は霧雨。何度もフィルターを変えながら撮影できる環境じゃなかった。
僕は「水銀灯とナトリウムランプ・・このフィルターで撮影します」と撮影を始めた。
同行した編集者は「久保田さん、フィルター何枚か変えなくて大丈夫ですが?」と心配そう。
僕は「以前も似た環境で撮影しているので大丈夫です」と答え。全身ずぶ濡れになりながら撮影を終えた。

当時は何も言わなかったが、Tさんは僕の写真をずうっと見てくれていたようだ。
この時の秘話をT編集長に話したのは10年近く経ってからだった。
Tさんは「久保田さんは人の表情撮るの上手いし、想いのある写真を撮ってきてくれるんですよね~」とカメラマンにとっては最高の褒め言葉をくれた。

昔から僕を可愛がってくれていたTさんと新宿で再会、一杯やることになった。
今回は前置きで字数オーバー。
続く。



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